【Vol.125】ダンスのコンペで負けたとき、実は同時に起きているいくつかのこと
こんにちは、SHINJIです。先日のイベントで、こんな相談をいただきました。
このような悩みは、コンペや評価のある場に一度でも立ったことがある人であれば、決して珍しいものではありません。
その上で、20年間の現場を見てきた中、お伝えできることとして、実際に勝負の世界に身を置いてみると、結果は技術だけで決まるものではなく、さまざまな環境要因が重なって生まれているという事実も、実感として分かってきます。
今回はこの相談を起点に、「気持ちの持ち方」や精神論ではなく、評価や結果の裏側で、構造としてどのようなことが起きているのかを整理してみたいと思います。
整理① トッププレイヤーも、沢山の「負け」を経験をしている
まず最初にお伝えしたいのは、長期的に結果を出しているダンサーを観察すると、共通点があり、それは勝っている回数と同じくらい、負けている回数も多いという点です。
- 予選落ち
- 評価されなかった大会
- 名前を呼ばれなかった経験
どんなに高い評価を受けているトッププレイヤーであっても、実際には相当数の「負け」や評価されなかった経験を、一緒に乗り超えてきていることがほとんどです。これは能力の問題というより、経験値が蓄積される過程としてのプロセスです。
言い方を変えると、挑戦する行動は、ゴールに近づくためのリスペクトされてよいアクションであり、”負け”自体は、挑戦回数(母数)が増えると、自然に起きる過程の一つである、と言えるでしょう。
整理② 勝負には、「環境要因」と「運」も、構成要素で含まれる
技術は最重要項目の一つですが、コンペの結果の多くは、技術“だけ”で決まっているわけではありません。評価型の勝負は、一般に次のような複数の要素が重なって成立します。
- ダンス技術
- 表現力・独創性・ストーリー
- ビジュアル
- 他の出場者との相対比較
- 大会や審査員ごとの評価軸
ここで重要なのは、これらの要素が常に同じ条件で揃うわけではないという点です。分かりやすい例をいくつか挙げます。たとえば他の出場者について、
- ケース1:参加者の多くが、たまたま「記念参加」や経験目的の初級層だった
- ケース2:入賞を強く意識した、超上級・コンペ志向のペアばかりだった
この二つでは、同じ技術レベルであっても、相対的な評価のされ方は大きく変わります。
また、大会や部門によって、評価基準についても、
- 基準1:技術中心に加点
- 基準2:コスチューム・ストーリー性含めたパフォーマンス構成全体へ加点
- 基準3:オンリーワンジャッジによる評価 *ジャッジの感性による評価
といった、異なる評価軸で、判定が行われることもあります。
こうした相対的な視点、環境要因や運要素も含む条件は、個人が事前に完全にコントロールできるものではありません。特に後半の要素については、当日のジャッジ構成や参加者の傾向によって左右される側面が大きくなります。
つまり、コンペの結果は、
という掛け算で決まる構造を持っています。
そのため、結果が出なかったという事実を、「自分の実力不足」と一つの要因に単純化してしまうことは、構造的には正確ではないと言えます。
③ 見落とされがちな要因:「その世界で求められている常識」
その上で、結果を左右する要因で、意外と見落とされがちなのが、そのジャンル・その大会で、リアルな観点で「何が求められているか」という前提理解です。
- ダンス技術なのか
- はっとさせる独自性なのか
- ジャンル特化型なのか、ミックス許容型なのか
- 音楽・コスチューム含めた全体のストーリー構成なのか
- 大会や審査員が重視する歴史的な特定要素を重視しているのか
これらの要素は、100%明文化されていないことも多く、観察や実際の経験を通して、少しずつ獲得していく情報も含みます。そのため、「技術的には一定水準に達しているのに、評価に結びつかない」という現象は、構造的に見て、一般的に起こり得ます。
分かりやすい例として、歴史的なサルサの大会で、ラテンの熱量やトラディショナルなサルサステップが歓迎される場において、クラシックバレエの技術が強い構成になっている場合を考えてみます。その踊り自体の技術レベルが高かったとしても、
- その場で求められている表現と方向性がずれている
- 大会や審査員が期待している「ジャンル感」と異なって見える
といった理由から、評価に結びつきにくくなることがあります。これは「上手い/下手」という問題ではなく、その場の文脈や期待値との適合度の問題です。
こうしたズレは、本人がそもそも「何が求められているか」を意識していない場合には、とても起こりやすく、結果として「なぜ評価されなかったのか分からない」という感覚につながります。(特に“好き”全開で、自分のスタイルでダンスコンペに出ようとする場合は一定のリスク考慮が必要です)
このように、評価の場では、技術そのものに加えて、ジャンル・大会・その場で求められている表現の前提が、静かに影響しているケースが少なくありません。これは能力不足ではなく、環境理解のズレであるケースです。
補足1: 「負け」は、分析に使えるデータである
構造的に纏めると、コンペ結果は、
- 技術的要因
- 環境的要因
- 評価軸との相性
が複合した情報(データ)です。次に有効なのは、感情的な自己否定や根性論ではなく、「何が作用したのか」を切り分けて観察することです。
- どのタイプが評価されていたか
- 大会の傾向
- 自分との差分
を見ることで、調整すべき方向が明確になります。特に、サルサ・バチャータのコンペは、多くの場合、正しい努力を重ねた人が優勝・入賞しているケースがほとんどです。
言い換えると、試行錯誤を重ねた人が残る仕組みとして機能しています。正しい方向で観察と調整を続ければ、入賞ラインに届く確率は、構造上、必ず上がります。
補足2:観察 → 補完 → 再挑戦
ここまで、コンペの結果には、技術だけでなく「評価軸・環境要因・相対関係」など複数の要素が同時に作用している、という構造を整理してきました。そのうえで、補足としてもう一段、「次にどう接続するか」を構造的にまとめます。
たとえば、もし振り返りの結果、技術的な改善余地が明確なのであれば、次回に向けて技術を上げればよい、というだけの話になります。技術ではなく「ジャンル感」が異なってた、ということであれば、そのGAPを埋めていきます。重要なのは「負けたこと」そのものではなく、結果をどう次に活かすかです。
✅ フロー:観察 → 補完 → 再挑戦
- 結果を「実力不足」と一言で片付けず、技術要因と環境要因を分けて見る
- 大会の傾向・評価軸・相対関係(他の出場者の質や方向性)を確認する
- 「何が足りなかったのか」ではなく「何が作用していたのか」を整理し補完
このプロセスは特別な才能の話ではなく、結果を出し続ける人ほど淡々と繰り返している手順です。言い換えると、コンペの結果は「最終結論」ではなく、次に活かすための材料として扱うことで、前進の精度が上がります。
補足3:「好きなスタイル」と「コンペ」は同義ではない
ここまでの整理を踏まえて最後に、「好きなスタイル」と「コンペに出ること」は、必ずしも同義ではありません。
コンペには、明文化されていないことも含めて、その場ごとに求められるルール・基準・文脈(いわゆる「大会の期待値」)があります。その基準に合わせて自分を調整していくプロセス自体を楽しめる人もいれば、自分の好きなスタイルや表現を大切にしたい人にとっては、コンペという形式が合わない場合も出てきます。
その場合、判断として「コンペに出ない」という選択もあります。それは自分のダンスとの向き合い方(フィールドと基準)を選び直している、という考え方になるからです。
いずれにしても大切なことは、評価のある場に挑戦する道も、好きなスタイルで踊り続ける道も、どちらが正しいという話ではないということです。大切なのは、自分がどのフィールドで、どの基準で踊りたいのかを理解したうえで、自分自身が納得のいく行動をすることだと思います。
🎯 まとめ:最初の質問に戻ります
最初の相談に戻ります。
この問いへの答えを、今日の内容を踏まえてまとめると、こうなります。
- ✔️ コンペには運と環境要因が必ず含まれる
- ✔️ トッププレイヤーほど「負け」の母数が多い
- ✔️ 能力ではなく、環境理解(求められる常識)のズレが原因のこともある
- ✔️ 結果は撤退理由ではなく、次の調整に使えるデータである
- ✔️ 観察と調整を続けた人が、評価に届く構造になっている
よって、「負けた」という事実は、やめる理由ではなく、次の調整材料として扱うことができます。
またフロアで。
SHINJI
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