【Vol.127】前は楽しかったのに…最近ダンスがしんどい時に起きていること
こんにちは、SHINJIです。イベントのソーシャルタイムで、来て下さった方からこんなご相談をいただきました。
でも最近は、伸び悩みや人間関係のことばかり気になってしまって…。
昔はあんなに楽しかったダンスが、今は悩みの方が大きくなっていて正直つらいです。どうしたら、また楽しく踊れるようになりますか?」
実はこれは多くの人が通る“自然なフェーズ”でもあります。今回はこの相談を起点に、気合いや根性ではなく、「悩みが増える構造」と「抜け方」を整理してみます。
結論:つらさの正体は、増えた”意識する項目”がメンタル資源を削っていること
まず結論から記載します。20年の現場経験からお伝えできることとして、「前は楽しかったのに、最近しんどい」という時、多くの場合、“意識する項目”が増えたことでメンタル資源が削られ、ダンスの世界で一番おいしい部分であるはずの、「今この瞬間の音・身体・一体感を楽しむ」が自分に入り辛くなっている、ということです。
その上で、誤解しない方が良いことは、悩み自体は“悪者”ではないという点です。悩み自体は本来、調整のために人が持つ自然な機能でもあります。その上で、情報が増えた状態で悩みを長時間回し続けると、注意力が奪われ、結果として楽しさが削れてしまう。ここが課題です。
言い換えると、ダンスの世界に入り込んだ分だけ、ダンスに求めるもの(期待するもの)が増えた、ということでもあります。これは「弱くなった」というよりは、むしろその世界で見えるもの(= 考える領域)が広がったという意味で、フェーズ成長の副作用でもあります。
整理① (特に)ペアダンスの世界は、気づくと“意識する項目”が増えていく
ここから深堀していきます。最初は「音楽が楽しい」「踊るのが気持ちいい」だけだったはずなのに、ペアダンスを続けて世界に入り込むほど、自然と意識する項目が増えていきます。
例えば、ペアダンス現場では、こんな“増え方”がよく起きます。
- 人間関係(誰と踊る/誰と距離を取る/相性/場の空気)
- 友人・異性・パートナー(好意/距離感/誤解/期待)
- イベントやコミュニティとの関わり(居場所/立ち位置/役割)
- 上達・比較(伸び悩み/同期との差/見られ方)
- チーム所属や競争(コンペ/大会/順位/評価)
- 承認欲求(コミュニティで役に立ちたい/褒められたい/必要とされたい)
改めて、これらが「悪い」というわけではなく、ペアダンスが生活の一部になってきた証拠です。
ただし、意識する項目が増えるほど、私たちの注意力は“常に複数タスク”になります。その結果、時間を過ごしていても、頭の中で「上達」「人間関係」「評価」「居場所」が同時に走り始め、ダンスの楽しさが薄れていくのは構造として発生します。
例として、こんなシーンに心当たりがある方も多いのではないかと思います。
- ソーシャルで楽しく踊っているはずなのに、嫌な人が同じ場にいて居心地が悪い (気分が落ちる、過去経験したネガティブな言動が頭の中によぎる等)
- チーム練習中に「自分だけ遅れている」が頭によぎって、音が入ってこない
- お手伝いを無理して頑張っているのに、周囲からの反応が薄くて、心が冷える
これは性格の弱さではなく、”純粋にダンスを楽しむ”という以外の項目へ、注意力がただ分散しているだけです。
整理② 増えた項目の多くは「コントロールできない」領域に属している
その上で、ペアダンスの世界で意識する項目が増えるほど、次に必ず出てくるのがこれです。「自分ではコントロールできないこと」が増えてくる。
例えば、
- 相手の態度・気分・価値観
- ダンス上達に関する期待値と実際のGAP
- コミュニティの空気や派閥っぽいもの
- イベントでの立ち位置や“序列”のような感覚
- 先生やチーム内からの評価
- 大会の審査基準や政治流行
そもそも論として、環境はコントロールできません。環境の中でもまれて、否定されて、誤解されて、消耗する。これは誰にでも起こり得ます。
また、一つ厄介なのが、ペアダンスは有意に距離が近いことです。手を繋ぎ、近い距離で踊り、大人のサークル的な、コミュニティのつながりも濃い。だからこそ、コントロールできない領域に“心が巻き込まれやすい構造”があります。(= これはペアダンスが固有に持つ空間特性です。)
整理③ コントロールできないことが増えるほど、注意力が分散し、メンタルコストが増える
結論として、意識する項目が増え、その中にコントロールできない領域が増えると、私たちの注意力は分散します。注意力が分散すると、何が起きるか。
- シンプルに、ただ気分が落ちる
- 踊っているのに、心が“別の場所”に持っていかれる
- 音を味わえない
- 相手と共鳴しづらい
- 結果的に上達も遅くなることもある(集中が薄くなるから)
ここで大事なのは、つらさの原因が、実は構造的に奪われていることです。つまり、今必要なのは「自分の弱さを責める」ではなく、構造的に注意力の配分を再設計することです。
対応策(方法論):コントロールできることに集中し、できないこととは“ほどほどの距離感”で付き合う
ここからが実践編です。ポイントはシンプルです。
自分のコントロールできる領域に集中して、できない領域は“ほどほど”にする。
この手の相談を受けた際、おすすめしている具体策を以下の通りまとめます。
- ① 悩みそうなことに対する「今日の目標」を、軽く事前に決める(交通整理)
例:「ダンスを楽しむ」「丁寧にリード/フォローを行う」「嫌だな、と、思ったら礼儀正しく断ってよい自分になる」など。悩みそうなことについては、ダンスの場に入る前に、周囲に任さない「自分がコントロールする(できる)範囲」を意識して決めておくと、メンタルコストが消耗しにくくなります。
“全部うまくやる”ではなく、優先度の高い項目を“絞って守る(例: 3つ)”がコツです。 - ② コントロール不能な項目には“名前をつけて棚上げ”する
例:「相手の気分問題」「コミュニティの空気問題」「解決できない悩み」
“解決しよう”ではなく、“分類して棚上げ”がコツです。名前をつけると、巻き込まれ方が減ります。
自分自身だけでは解決できない悩みが出てきたら、心の中で「はい、これはコントロール不能な◯◯問題」とラベルを貼り、意識して距離を置きます。 - ③ 距離感を「ゼロか100」ではなく、30〜60で設計する
近すぎると巻き込まれ、遠すぎると孤立がつらい。だから、礼儀・挨拶・最低限の関わりは保ちつつ、深追いはしない。“ほどほど”を選ぶ成熟がコツです。 - ④ その上で、自分がコントロールできる範囲に意識を向ける
自己完結できる範囲に意識を向けることで、ノイズが軽減します。
論点:孤独力を磨く(=自己承認を身に着ける)
20年間現場を見てきた私からのおすすめとして、孤独力を磨く(自己承認力)を磨くと、ペアダンスの世界は一層過ごしやすくなります。
※孤独に過ごす、という意味ではなく、自己満足できる力を身に着ける、という意味です。
上記にも記載しましたが、ペアダンスの世界は、(他者)承認欲求が入りやすい場所でもあります。「誰かと繋がられる」「異性から喜ばれる」「イベント手伝うと褒められる」「誰かに必要とされると嬉しい」——それ自体は自然です。ただ、承認が外部に寄りすぎると、環境の揺れで心も揺れます。
だからこそ、“自分で自分を承認する”練習が効きます。④にも関連しますが、
例:
「今日も踊りに来た」(目的 – 自己完結 – 自分で満足)
「1曲、音を味わえた」(達成感 – 自己完結 – 自分で満足)
「自分の軸を守って楽しくイベントを過ごせた」(過ごし方 – 自己完結 – 自分で満足)
ここで言う孤独力は、仮に周囲へ依存しなくても自己完結する、ひとりでも整えられる力です。こちらは、周囲はどうでもいい、ではなく、周囲が揺れても自分の楽しさを守れるという意味です。この前提があると、自然に、人とも優しく関われます。(=自分に余裕が出るからです)
不思議なもので、自分に余裕があると、結果的に周囲の環境とも共鳴しやすくなります。結果として、ダンスの世界も次のステージに進んでいきます。
(順番:①”自分”を満たす → ②”周囲”へ伝播する → ③”世界”が自然に広がる)
🎯 まとめ:最初の質問に戻ります
最初の相談に戻ります。
今日の内容を踏まえて答えるなら、こうです。
- ✔️ ダンスがダメになったのではなく、意識する項目が増え、注意力が奪われている
- ✔️ 増えた項目の多くは、人減関係等コントロール不能なので、正面から抱え込むほど消耗する
- ✔️ 解決策は、自分がコントロールできる領域に集中し、できない領域とは“ほどほど”に付き合う
- ✔️ そして、外側の承認ではなく、自分で自分を承認できる「孤独力」が、楽しさを守る武器になる
悩みが増えるのは、真面目に向き合ってきた証拠でもあります。だからこそ、注意力の配分を設計し直して、少しずつ、ダンスの楽しさを取り戻していきましょう。
※悩みは、ライフステージによっても変わります。ライフステージにおける関わり方について深掘りしたい方は、こちらもご参考ください。
【Vol.103】ライフステージとともに変わる──ダンスへの関わり方と人間関係のポートフォリオ
またフロアで。
SHINJI
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