【Vol.138】 振付で覚えた動きを、ソーシャルで自然に出すコツ3選

Bachata

【Vol.138】 振付で覚えた動きを、ソーシャルで自然に出すコツ3選

こんにちは、SHINJIです。
先日、ソーシャルの場でこんなご相談をいただきました。

「振付クラスやパフォーマンスで、一生懸命振りを覚えたのに、終わったら元通りになってしまいます」
「ソーシャルで自然に出てこないし、せっかく覚えた動きを活かせていない気がします」

これは、すごく自然な悩みだと思います。振付クラスやパフォーマンスでは、決められた順番を覚え、音に合わせ、仲間と揃え、見せる形まで作っていきます。
それ自体は、とても大きな経験です。

ただ、ここで一つ大事なポイントがあります。
振付で「覚えた動き」と、ソーシャルで「自然に出てくる動き」は、少し別物です。

振付は、いわば台本のあるダンスです。一方でソーシャルは、相手・音楽・空気に合わせて、その場で会話するような即興のダンスです。

だから、振付を覚えたのにソーシャルで出てこないからといって、失敗ではありません。それはまだ、その動きが「順番の記憶」から「自分の自然な動き」へ変換されていないだけです。今回は、振付やパフォーマンスで覚えた動きを、ソーシャルでも少しずつ自然に活かしていくためのコツを整理してみます。

◆ 整理:なぜ、振付で覚えた動きはソーシャルで出てこないのか

まず前提として、振付で覚えた動きがそのままソーシャルで出てこないのは、かなり普通です。理由は大きく3つあります。

1つ目は、振付は「順番」で覚えているからです。

振付では、
「この音で右に行く」
「次にターンする」
「ここで手を上げる」
というように、流れ全体で記憶します。

でもソーシャルでは、その順番通りの状況はほとんど来ません。
相手も違えば、音楽も違い、スペースも違います。
そのため、振付を丸ごと再現しようとすると、逆に体が止まりやすくなります。

2つ目は、振付は「見せる形」で作られていることが多いからです。

パフォーマンスでは、見栄え・角度・揃い方・演出が大事になります。
一方でソーシャルでは、まず相手との心地よさ、リズム、距離感、安全性が大事です。
つまり、振付の動きをそのまま出すよりも、ソーシャル用に少し小さくしたり、シンプルにしたり、相手に合わせやすくする必要があります。

3つ目は、まだ「考えなくても出る動き」になっていないからです。

ソーシャル中に、
「あの振付のあの動きを入れよう」
「次に何を出そう」
と考えすぎると、体は固まりやすくなります。

即興ソーシャルで使える動きは、基本的には考えなくても自然に出る動きです。だから、振付で覚えたものを活かすには、まずそれを小さな部品に分解して、自分の自然な動きに変えていく必要があります。

◆ 解決策(アクション)1:振付から「3つだけ」持ち帰る

振付クラスやパフォーマンスが終わった後におすすめなのは、全部をソーシャルで使おうとしないことです。全部を残そうとすると、逆に何も残りにくくなります。

まずは、振付の中から自分がソーシャルでも使いたい動きを3つだけ選ぶくらいで十分です。例えば、

  • このターンの入り方は使えそう
  • このアームスの置き方は自然に入れられそう
  • このボディムーブメントは、ベーシックの中でも使えそう
  • この止まり方・間の取り方は、音に合わせて使えそう
  • この方向転換は、ソーシャルでも応用できそう

というイメージです。

ポイントは、振付を丸ごと覚え続けるのではなく、「素材」として持ち帰ることです。料理で言えば、完成した一皿をそのまま再現しようとするのではなく、

「このソースは使える」
「この切り方は使える」
「この味付けは自分の料理にも入れられる」

と、自分の中に取り込んでいくイメージです。

🕺 リーダーのポイント
・振付の中から、ソーシャルでも安全に使えそうなリードを1〜3個だけ選ぶ。
・難しいコンビネーションより、入り方・方向転換・止まり方などを持ち帰る。
・相手が分かりやすく受け取れる形に、少しシンプル化する。

💃 フォロワーのポイント
・振付の中から、ベーシック中にも入れられる小さな表現を1〜3個だけ選ぶ。
・アームス、視線、体の向き、タップ、回旋など、相手のリードを邪魔しない動きを選ぶ。
・大きく見せるより、まずは自然に入れられるサイズにする。

振付後に「全部忘れてしまった」と感じる必要はありません。
3つ残れば十分成功です。

◆ 解決策(アクション)2:「順番」ではなく「部品」として練習する

次に大切なのは、持ち帰った動きを部品化することです。
振付の中では、ある動きは前後の流れとセットになっています。
でもソーシャルで使うには、その動きを単体で取り出せる必要があります。

例えば、振付の中に綺麗なターンがあったとします。
その場合、振付の順番ごと覚えるのではなく、こう分解します。

  • どの足から入っているか
  • どのタイミングで回っているか
  • 体重はどこにあるか
  • 手や腕はどこに置いているか
  • 回った後、どこに戻ってくるか

ここまで分けると、その動きは「振付の一部」ではなく、自分の引き出しになっていきます。そして、最初は1つの使い方で大丈夫です。

慣れてきたら、少しずつバリエーションを増やします。

  • ベーシックの中で使う
  • ターン後に使う
  • 音が止まったところで使う
  • 小さく使う
  • 大きく使う
  • 右向き・左向きで使う

このように、3 → 5 → 10 → 20と、同じ属性の動きを少しずつ広げていきます。

大事なのは、いきなり難しいことを増やすのではなく、自分が自然に出せる動きと掛け算することです。例えば、

  • ベーシック × アームス
  • ベーシック × ボディムーブメント
  • ターン × 視線
  • クロスボディリード × 方向転換
  • ブレイク × タップ

というように、すでに自分ができる動きに、少しだけ振付の要素を足していきます。これが、ソーシャルで自然に出るための現実的なルートです。

◆ 解決策(アクション)3:「自然80:チャレンジ20」でソーシャルに入れる

ソーシャルで新しい動きを使おうとするとき、全部をチャレンジにしてしまうと、かなり難しくなります。相手もいて、音楽も流れていて、周りにも人がいます。
その中で、覚えたばかりの動きをいきなり完璧に出そうとすると、頭も体も忙しくなります。

おすすめは、自然80:チャレンジ20くらいの感覚です。いつものベーシック、いつものターン、いつもの流れを中心にしながら、1曲の中で1回だけ、振付から持ち帰った小さな動きを入れてみる。それくらいで十分です。

例えば、

  • 1曲に1回だけ、振付で覚えたアームスを入れる
  • 1曲に1回だけ、音に合わせて止まってみる
  • 1曲に1回だけ、ターン後の見せ方を変えてみる
  • 1曲に1回だけ、振付で覚えた方向転換を使ってみる

このくらいの小ささで良いと思います。

人は、全部を変えようとすると元に戻りやすいです。でも、1つだけなら変えられます。そして、その1つが自然に出るようになると、次の1つを足せます。それを繰り返していくと、いつの間にかソーシャルの中で使える動きが増えていきます。

◆ 論点:振付は「披露するため」だけでなく、「自分の踊りを育てるため」にある

振付クラスやパフォーマンスというと、どうしても本番がゴールに見えやすいです。

もちろん、本番で踊り切ることは大きな達成です。
仲間と練習し、人前で踊り、緊張を乗り越える経験は、とても価値があります。
でも、もう一段深く見ると、振付やパフォーマンスには別の価値があります。

それは、自分一人では出会えなかった動きに出会えることです。

普段のソーシャルだけでは、どうしても自分の慣れた動きに戻りがちです。
でも振付では、普段やらない方向、普段使わない体の使い方、普段選ばない表現に出会います。その意味で、振付は自分の踊りを広げるための外からの刺激です。

ただし、その刺激を自分のものにするには、終わった後に少しだけ整理が必要です。

  • この振付で、自分は何を学んだのか
  • どの動きならソーシャルでも使えそうか
  • どの動きは、まだ見せる用で、ソーシャルでは小さくした方が良さそうか
  • どの表現は、自分らしさとして残したいか

こうやって振り返ると、パフォーマンスは「一回限りの発表」ではなくなります。
自分の踊りの土台に、少しずつ積み重なっていきます。そして大切なのは、振付で覚えた動きをすべてソーシャルで使う必要はない、ということです。

使えるものを中心に選べばOK。
自分に合うものを中心に残してOK。
今の自分には難しいものは、少し寝かせてもOK。

そう考えると、振付やパフォーマンスの経験は、もっと自由で、もっと長く自分の中に残っていきます。

ちなみにこれは、ダンスだけではなく人生にも似ていると感じています。
何かを学んでも、すぐに人生全体が変わるわけではありません。
でも、学んだことの中から、例えば1つだけ日常に持ち帰る
それを何度も使って、自分のものにしていく。

人生・ダンス双方の階層における共通項として、それらの積み重ねで、学びは一時的なイベントではなく、自分のダンス(生き方)の一部になります。

纏めると、振付やパフォーマンスは、終わったら消えるものではなく、自分の踊りを少しずつ育てる素材としての学びです。

◆ 最後に:最初の質問に戻ります

最初の質問に戻ります。

「振付クラスやパフォーマンスで、一生懸命振りを覚えたのに、終わったら元通りになってしまいます」
「ソーシャルで自然に出てこないし、せっかく覚えた動きを活かせていない気がします」

この悩みに対する私の答えは、元通りになっているように見えても、経験はちゃんと残っているということです。

ただ、それをソーシャルで自然に出すには、振付をそのまま再現するのではなく、自分の自然な動きに変換するプロセスが必要です。

まとめると、ポイントは3つです。

  • 振付から「3つだけ」ソーシャルで使いたい動きを持ち帰る
  • 順番ではなく、部品として分解して練習する
  • 自然80:チャレンジ20で、1曲に1回だけ試してみる

振付は、終わったら消えるものではありません。
自分の中に小さく残し、少しずつソーシャルで使える形に育てていくものです。

一生懸命覚えた動きが、ある日ふと、ソーシャルの中で自然に出てくる。
その瞬間は、かなり嬉しいです。

そしてそれは、派手な成功というより、自分の中にちゃんと積み重なっていたものが、自然に花開く瞬間なのだと思います。その積み重ねが、振付も、ソーシャルも、自分らしい踊りへとつなげてくれます。

またフロアで。SHINJIでした。

※”ソーシャルシャイン”について深堀したい方はこちらの記事もご参考下さい。
【Vol.90】サルサにおける“ソーシャルシャイン”の組み立て方──4エイト+αで魅せる


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